ミセスで好評連載中 「伊藤まさこさんの松本12か月」 本誌では載せきれなかったこぼれ話をご紹介します。

9月号 湖の森

松本から上田へ抜けるトンネルの手前に美鈴湖という、一周2キロほどの、小さな湖があります。その湖をぐるりと囲む三才山という森の中で、放し飼いで鶏を育て、炭を焼いているご夫婦がいらっしゃいます。春から夏にかけては鹿児島の養蜂家が巣箱とともに訪れて、はちみつを採るのだそう。

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今月の取材ノート

美鈴湖という名前……実はこの連載で登場するのは2回目です。1回目は2009年1月号「雪が降った日に」。美鈴湖のすぐ脇にあるスケート場は、当時真っ白な銀世界。そして季節が巡り、秋の始まりに再び訪れた美鈴湖は、風景が一変し、緑豊かで静かな表情を見せてくれました。周囲がドライブコースにもなっているので、水辺に近づけるのはほんの一角。伊藤まさこさんが教えてくれた場所は、やはり地元に住んでいるからこそ見つけられるとっておきなのです。

小道をのんびりと歩いていると、まさこさんが松ぼっくりを拾いはじめました。小さな季節の移ろいを、ちゃんと感じ取って感動できる……何気ないことだけれど、これがまさこさんのすてきなところだなあと思います。

その美鈴湖を囲む森にある、三才山というエリア。そこで鶏卵業と炭作りをしている柳沢さんご夫婦に会いに行きました。まず目に入ったのが、木漏れ日がさす炭焼き用のまきが積まれているところ。

そのまきの上で、さっそく卵を撮影です。産みたての卵はとにかく大きくてずっしりと重い。まさこさんによると、卵の味も濃厚で、生卵が苦手な人もおいしくいただけるとのこと。お土産にといただいたその卵とはちみつ……。まずは手軽にフレンチトーストを作ってみましたが、とってもおいしかった。
この卵は、奥さまの範子さんが、毎朝松本市内の店やホテルに届けているというお話でしたが、「鶏の世話をしているのは主に主人なんですよ。私はちょっと手伝っているだけですから」と控えめにおっしゃったのが印象的。すてきなご夫婦ですね。こんなところにも、松本の食を真摯に支えているかたがいるということを、知っていただけたらうれしいです。
(ミセス編集部)

松本の小さな風景

松本市美術館にて。シンボルは地元出身のアーティスト、草間彌生さんのオブジェ。そして美術館の中庭の片隅には、草間さんデザインの自動販売機やベンチ、ダストボックスが並び、隠れた名所に。

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伊藤まさこさんプロフィール

いとう・まさこ
1970年横浜生まれ。文化服装学院で服作りとデザインを学ぶ。卒業後は料理や雑貨などのスタイリストとして数多くの女性誌や料理本で活躍。洋裁書や料理書、エッセイなど暮しぶりを紹介した本を出版し、持ち前のセンスや丁寧な暮しぶりで人気を集める。著書に『伊藤まさこの針仕事』『こはるのふく』(文化出版局)など多数。