ミセスで好評連載中 「伊藤まさこさんの松本12か月」 本誌では載せきれなかったこぼれ話をご紹介します。

雛の日の木曾漆

3月号 雛の日の木曾漆

町の花屋に桃の花が並びはじめたら、雛祭りが近づいてきた合図。立ち雛の横に桃の花を飾り、ちらしずしと甘酒でお祝い。毎年、簡単ではありますが、こんなふうに娘の成長を祝ってきました。雛の日には木曾漆器の重箱に、生菓子を盛ります。四角い漆の箱にちんまりとかわいらしく収まった雛菓子は、いかにも女の子のお祭りにふさわしい愛らしさです。

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WEB連載バックナンバー

今月の取材ノート

松本から車で40分ほど。木曽は冬真っただ中です。
ここは、北原さんの工房に伺う前に立ち寄った宿場町の奈良井宿。

観光客でにぎわうスポットですが、冬はひっそりと落ち着いた雰囲気。
ゆっくりと散策できるので、これもまたいいものだなあと思ったり……。
漆器をはじめとして、暮しの工芸品を売る店、そしておそば屋さんなどもありました。

少しだけ観光気分を味わってから、いよいよ北原久さんの工房へ。
ちょうど下地作りのためにトレーに麻布をはっていらっしゃった北原さん。
漆器の断面にこんなひと手間があったこと、ご存じでしたか?

物作りの現場でいつも気になってしまうのが、道具です。大小様々なへらが並ぶ様子はとても美しかった。すべてご自身で手作りされるというへら。もちろんよりいいものを作るためのこだわりでもありますが、伝統工芸を生み出す現場では、材料や道具を作るかたがとても少なくなっていて、手作りせざるをえないのも現実。伝統を守っていく厳しさは計り知れないものがあるようです。

取材を終えてからは、作品を購入させていただきました。いつも即断即決……(に見える)まさこさん。珍しく悩んで吟味していたのが印象的でした。「どうしよう。欲しいものがいっぱい……」と。うれしい悲鳴ですね。そして選んだのが写真の3種。さすが!すぐに使ってみたくなるものばかり。

本誌でご紹介した重箱を、まさこさんから見せていただいた時、なんてシンプルで美しいんだろうと思いました。漆器、特に重箱は、お正月に使うもの…… そんなイメージがあったとしたら、本当にもったいない。まさこさんの雛菓子を飾ったテーブルを見てからは、漆器がぐっと身近に感じられたのが一番の収穫でした。そして私もちゃっかり汁椀を購入。普段に、でも大切に使わせていただいています。

(ミセス編集部)

松本の小さな風景

松本市内にある高砂町の小さな商店街。ここは人形店が軒を連ねます。この時期は雛人形、ほかにも五月飾りや、昨年8月号でご紹介した七夕人形など、季節の移り変りを感じられる通りです。

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伊藤まさこさんプロフィール

いとう・まさこ
1970年横浜生まれ。文化服装学院で服作りとデザインを学ぶ。卒業後は料理や雑貨などのスタイリストとして数多くの女性誌や料理本で活躍。洋裁書や料理書、エッセイなど暮しぶりを紹介した本を出版し、持ち前のセンスや丁寧な暮しぶりで人気を集める。著書に『伊藤まさこの針仕事』『こはるのふく』(文化出版局)など多数。